マニアの館

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金曜日の午後、キュウジの町にある映画館の前で待ち合わせをして、
オーナーであるファビオ=チェンニさんのカンティーナ兼自宅へ訪問する。
快く出迎えてくれた彼は、まず畑へと案内してくれました。




まず気になることは、そう彼独自に研究されたサンジョベーゼ種のクローンの数・・・。
3年前に訪問した時は18種類、昨年のヴィニタリーでは24種類、さて今年は?彼は言った「28種類ある!」と。
畑別に一番あったクローンを厳選して増やしているそうで、別々にクローン違いのサンジョベーゼを食べてみるが、
甘さや酸味など様々で、鼻から抜ける香りの違いには、同じ種類のブドウとは思えませんでした。
彼もそのことを強調し、香りを感じてくれ!と言っていました。

そして、ここですぐに違和感を感じることは、木になっているブドウの房の量で、
何軒も蔵を訪問していますが、ここほど房も少なく、粒もまだらなところは他にありません。
それが途轍もない凝縮感を生むのです。




そして今年は気になることを・・・。
サンジョベーゼ100%と思いこんでいたワインに異変が?!そう、「コロリーノ種がある」と言うではありませんか!
自信に満ちた顔からは「とても大切な役割がある」と、
どうしてもサンジョベーゼだけだと、果皮の色素が足りないそうで、そこで果皮の濃いコロリーノに白羽の矢が飛んだと言うことです。
約2%分ブレンドされています。
ちなみに、これは以前から少しずつブレンドされていたそうです。

十分に甘くなっていたサンジョベーゼも10月まで収穫を待つそうです。
種の熟成具合も見ましたが、他の蔵なら翌週にでも収穫できそうな状態ですが、リスクを冒してまで、完熟させるそうです。
また房や粒が少ないので、ブドウを少し食べただけでも甘さや凝縮感に違いが分かります。

そして貝の化石が層になっている場所に案内され、土壌の説明を受けました。
このミネラルの豊富な土地から、酸に力のあるワインが出来ることも頷けます。
ブドウを食べてみると、ワイン以上にミネラル感を強く感じました。



<左サンジョベーゼ・右コロリーノ>

畑の手入れは行き届いており、養分を与えるために葉はやや多めに茂っていました。
8月上旬にぎっしりとブドウの粒の付いた房から順に約70%を切り落とし、
また風通しを良くするために、ブドウの粒をも切り落とし、良い粒と粒の間に隙間を作って残します。

そして、それらを十分に熟させます。
それが1本の木から500グラムしか採れない理由です。
常に完璧を目指す、妥協を一切許さないワイン造りがそこにあります。
アグロモには、畑のスペシャリスト・フェデリコ=クルタス(ピエモンテのアンジェロ・ガヤで、畑の責任者を務めていた凄い男)、
そしてエノロゴには、知識豊かなで腕利きのアッティリオ=パリを起用し、助言を求めながら、畑・醸造の管理を行っています。

サンジョベーゼの収穫は、メルロなどと違い時期がかなり遅く、リスクが多いそうです。
しかも危険を冒してまでも、完熟させるために、かなりの遅摘みを行います。
毎年早くとも9月末から10月になるそうです。
そして長年研究し、28種類植えられているサンジョベーゼ種のクローンをクローンごとに収穫し、
木樽でアルコール発酵した後、バリック(現在は、約40%新樽、少しずつ新樽率を上げるそうです)でマロラクティック発酵を行います。
16ヶ月間バリックで熟成させてから、ステンレスタンクでいよいよ
28種類のサンジョベーゼとワインになると約2%となるコロリーノがブレンドされます。
その後、再びバリックで少し熟成させ、そして瓶熟させてから出荷します。
偉大な01年の多くは、瓶熟され、国内用は未だに出荷されていません。




そしてカンティーナへ、エルトリア時代の古墳を利用していて、常に一定の温度に保ち、
また十分な湿度もあり、瓶熟中のワインはカビが生えていました。
ワインにとっては素晴らしい環境です。




そして綺麗に掃除され、誇りすら落ちていないステンレスタンクや瓶詰め機のある部屋は、
一面白のタイルで手術室ではないかと思わされます。
彼の本業は医者なので、クローン研究と言い、綺麗なタイルといい、頷けます。


 
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